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心に沁みるあたたかさ

法話   2019/10/12
2019年10月12日放送

おはようございます、函館市 永全寺 齊藤隆明です。
今年百歳を迎えたお檀家さんのIさんは、二十五年前につれあいを亡くされてから、おととしまで一人暮らしをしていて、私は読経供養のために、毎月お伺いしておりました。
これからの季節「ごめんください」と、玄関を開けますと、奥の方から「方丈さんちょっと待って下さい」という声と共に、ストーブの前で暖めておいた座布団を、仏壇の前まで持ってきてくれます。それがまた、暖かくて気持ちがいいのです。
そして、先代の住職からお世話になっている習慣で「今日おそば、あったかいのにします?」「冷たいのにします?」と聞いてきます。
私は「温かいのをお願いします」といい、読経をはじめます。
同時にIさんは早速鍋に水を入れ、火にかけ、そば作りを始めます。
途中、Iさんは必ず私の後ろで、お焼香をしにきますが、すぐまた台所に戻り、そば作りを続けます。
読経が終わり居間の椅子に腰かけると、酢の物やおひたしなどの小鉢と共に、どんぶりのつゆが溢れ出しそうな、山盛りのそばが運ばれてきます。
そこでIさんは「大丈夫かな〜、しょっぱかったらいってね〜」と言い、私は「いただきます。おいしいですよ」とお決まりのやりとりがあります。
食べ終わると今度は、リンゴの皮を目の前で剥きはじめて、皿に盛り付け「甘いかな〜」といいながら私の目の前に置きます。
完食して、お腹がパンパンになった私は「ごちそうさまでした」を言った後、しばらくおしゃべりをして帰ります。
供養には元来「尊敬をもって、ねんごろにもてなす」という意味があります。
Iさんのお宅を訪れると、「いつも供養されていたのは私の方だった」と気付かされます。
そして、そのことを思い出す度に、Iさんの温かい思いと言動が、心に沁みてくるのです。

函館市 永全寺
齊藤隆明

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