「除夜の鐘」
法話
2016/12/31
2016年12月31日放送
お寺、そして大晦日と聞けば大抵の方が「除夜の鐘」を思い浮かべるのではないでしょうか。鐘を撞くことによって心の中の煩悩を取り除く。ですから煩悩の数と同じ108回鐘を撞くとされています。
さて、今より20年前、私は横浜にございます大本山総持寺にて、修行僧として日々を過ごしておりました。年末も近づいたある日、除夜の鐘の担当という大役を頂きました。担当とはいっても鐘を撞くのは私ではなく、当日お集まりくださった一般の方々。私の役目は鐘の撞き方の作法を一人一人に伝え、そして鐘が一つ撞かれる度に額を地面につけるお拝を一般の方の代理となり行うことでした。
この除夜の鐘には様々な人が集まります。年配のご夫婦なのでしょうか、お二人で一本の綱を握り鐘を撞く方。本来の意味からは外れてしまいますが、願掛けをされる方。ただ一言「ありがとう」と呟き鐘を撞かれる方。ほかにも沢山の方がいらっしゃいましたが、皆さん全員に共通することがあります。鐘を撞き終えると晴れ晴れとした善いお顔になって帰っていかれるのです。いま思えばそれこそが除夜の鐘の御力だったのかもしれません。
あと十数時間もしますと除夜の鐘が鳴り響きます。菩提寺に除夜の鐘を撞きに行く、そのような年の越し方もよいのではないでしょうか。
厚岸町 吉祥寺
斉藤 章道
斉藤 章道