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「人間回復の島」

法話   2015/07/25
2015年07月25日放送

落語に、こんな小噺があります。兄が弟に向かって、「お前、そんなところで、竿を持って何をしている」「お星様を一つ捕ろうと思っているんだ」「ばか。そこじゃ低い。物干しへあがれ」という話になり、さらに父親が加わって、「それで届くものか、もう一本をつなげ。」
これは人の無学無知を笑い話にしたものですが、無知が偏見をもたらし、人を傷つけることがあります。
四年ほど前、その一例を目の当たりにしてきました。岡山市からバスで一時間ほどの瀬戸内に面した風光明媚なところに、長島という小島があります。沖合いに小豆島が見え、目の前の海には牡蠣の養殖筏が浮かんでいます。
この島には昭和五年に設立された長島愛生園という国立ハンセン病療養所があります。
設立当初から、入所者は、トラックや貨車で運ばれ、島へは船で渡りました。隔離のために橋が架けられなかったのです。
島に入って、まずクレゾールの風呂に入れられ、健康診断を受け、「三ヶ月もしたら帰れるから」といわれて、その後数十年の間、島に隔離されたままというのが実際でした。
ハンセン病の原因である「らい菌」は、非常に感染力の弱い菌であることが分かっていたにもかかわらず、とても怖い病気であるという誤った認識を人びとに植えつけてしまったのです。
そのせいで患者だけでなく、家族も近所付き合いから疎外され、住み慣れた土地から引越を余儀なくされるなどの差別を受けました。ハンセン病に対する「無知」が偏見と差別を生んだともいえます。
現在の入所者は、全員完治していますが、島を出る人は少ないということです。いまだに世間の偏見や差別があるからです。
長島に邑久長島大橋という橋が架けられたのは、昭和六十三年になってからです。この橋を「人間回復の橋」と呼び、いまの療養所を「人権学習の島」として多くの人に門戸を開いています。

小平町 興聖寺
仙石 景章

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