2012年9月29日放送
法話
2012/09/29
2012年09月29日放送
皆さんは毎日寝る前に、その日の朝と昼に何を食べたかを思い出すことができますか?
私は、大学を卒業して本格的にお坊さんの修行をする前の約三年間を、東京でサラリーマンとして多忙な毎日を送っておりました。忙しい時には終電で帰宅することもあり、そういう時は常に頭の中は仕事で一杯でした。疲れ果てて蒲団の中に潜り込み、ふと朝ごはん昼ごはん何をたべたかな?と思い出そうとしても、何を食べたか思い出すことができません。何故なら食事をしている時ですら頭の中は常に仕事に囚われていて、うわの空でご飯を食べていたからです。
神奈川県の大本山總持寺を開かれた、瑩山禅師は「茶に逢うては茶を喫し、飯に逢うては飯を喫す」と示されております。お茶を飲む時にはお茶を飲む事に集中し、ご飯を食べるときにはご飯を食べる事に集中する。さらには、お茶や食事だけでなく、今の自分の行いに集中しなさいという教えであります。
皆さん、朝起きたら歯を磨くし顔も洗いますよね。散歩もするし、掃除もしますよね。その時は、今やっている事にただひたすら集中して下さい。心ここに在らずでは、私のように後で振り返って「はて、何をしていたんだ?」ということになってしまいます。禅の修業は、坐禅やお経をお唱えしたりするだけでなく、日常生活すべてが修行であります。
お釈迦様は、「過去は既に過ぎ去り、未来は未だ来ていません。ただ今なすべきことをしなさい。」と教えております。今を生きずに、一体いつ生きるのでしょうか?かけがいの無い時を後悔することなく精一杯生きましょう。
名寄市 東照寺
有田 昭宗
有田 昭宗