2012年4月7日放送
法話
2012/04/07
2012年04月07日放送
野山はまだ雪に埋もれていますが、今年もまた春がやってきました。 雪解けを待ちかねて、庭の花壇に真っ先に芽を出すのが、スイセンです。この花は室町時代に中国から輸入され、大本山永平寺のある北陸福井の越前海岸で栽培されたのが始まりだそうです。そのため、今でも水仙は福井県の県花になっています。
冬の寒さによく耐え、雪の中でも花を咲かせる水仙は、雪中花ともよばれ、その生命力の強さはどんな苦難にも負けない頼もしさを感じさせられるものです。先の大震災での皇后陛下と水仙の花の心温まるエピソードは、いまだ記憶に新しいところであります。
このように気高い美しさを持つ水仙でありますが、反面、強い毒を持っています。
私の母が嫁いで間もないころ(と言っても五十年以上も昔のことですが)、家の畑でニラを採った際、近くに生えていた水仙の葉をニラと間違えて、一緒に収穫してしまいました。さて母は、それを夕餉のおかずにと、卵とじにして食卓に出しました。 その食後、家内中が激しい嘔吐に襲われるという、大変な食中毒騒ぎを起こしてしまったことがあるそうです。
春の訪れとともに、フキノトウやツクシ、行者ニンニク、クレソン、タラの芽など、たくさんの山菜が採れるようになります。 しかし、春の山菜はその生命力の強さに比例して、アクも強くなります。これらのアクには水仙ほどの毒性は無いものの、やはり人体には有害で沢山食べると著しく寿命を縮めてしまうそうであります。
何事に対しても、欲望の赴くままになせる行いは我が身をダメにしてしまうものです。用心して春の味覚を楽しみたいものであります。
札幌市 真龍寺
飯田 整治
飯田 整治