2011年4月2日放送
法話
2011/04/02
2011年04月02日放送
さきごろ、大学入試で携帯電話を使用してのカンニング事件が起き、大騒ぎになりました。犯人とされた受験生は「授業料の安い京都大学に入って、母親を安心させたかった。」と供述していました。聞くところによると、父親が亡くなり母ひとり子ひとりの家庭とのこと。カンニングは悪い行いではありますが、この母子の心情を思うと、まことに気の毒な気持ちで一杯になります。
この「まちがった親孝行」は、「親のことを思うあまり」の行いであります。私たちは同様のあやまちをたびたび繰り返しています。たとえば、わが子を思う一心で、他人の子を殺めた事件がありました。また、「お国のため」という崇高な理想を掲げて戦争をしたこともあります。
昔、中国に、インド伝来というお釈迦さまのお骨を、昼夜礼拝する男がおりました。 この男に、あるお坊さんが言いました。「お前が拝んでいるのは、毒蛇だぞ。」と。すると男は、「それでは、尊いお釈迦さまのお骨を見せてやる」と、意気込んで骨壺の蓋を開けて見ると、なんと!壷の中には毒蛇がトグロをまいていた、ということです。
このことは、おのれが良かれと思って執着していると、とんでもない間違いをおかすこともある、という教訓であります。
春、四月。あらためて、自分自身の行いと心を見つめなおし、正しい道を歩みたいものであります。
新篠津村 光明寺
藤原 重孝
藤原 重孝