2010年1月9日放送
殺伐としたこの時代、親切な言葉を掛けられても相手の心の裏側に何か有るのではと素直に受けとめられないという難しく淋しい世の中になってしまった様な気が致します。
「人と接して仏となる」これは私の本師が示してくれた言葉の一つです。
自分と気持ちが合う人でも合わない人でも、様々な人と接する事が人生の糧になる。
しかしストレスの多い今の社会では人と接する事で逆に心の病にかかる方も増えたようです。
よく人から元気をもらうという事を聞きます。これは相手からの励ましの言葉に元気をもらう事は勿論ですが、それ以上に元気づけようとする相手の気持ちがその場に温かい雰囲気をつくり、その優しい空気が自分の心を穏やかにし元気を取り戻す事が出来たのではないでしょうか。
人と接している時のその場の空気は自分達が発しています。勿論これは酸素や二酸化炭素等の科学的な成分の事を言っているのではありません。
優しい会話の時には優しい空気、厳しい会話の時には厳しい空気、真剣な時には真剣な空気がその場に生まれます。知らず知らず生み出されている気、雰囲気の事であります。そしてその空気を生み出しているのが私達の心です。
供養の養は「養う」という字です。これは私達が誰しもが持っている「仏心」つまりは人間らしい優しい心を養う事、育てる事であります。そしてその心を養う場がお寺での行事であり、皆様方が営まれる法事等の先祖供養です。一心に手を合わされるその場には真剣に亡き人を思う篤き空気が満ち溢れます。この空気をいっぱい吸う事で疲れた心を洗い流し、優しい心という栄養を与えてくれます。
殺伐とした世の中は誰のせいでもなく一人一人の疲れた心のその結集です。
自分達で心を養う努力し明るい世の中にしたいものであります。
岩井 淳一