2009年12月19日放送
法話
2009/12/19
2009年12月19日放送
皆さんはこの一年どんな一年だったでしょうか。何か新しい出来事はあったでしょうか。
良い事の多い一年でしたでしょうか。それとも逆に辛い事の多い一年でしたでしょうか。
人によって様々であった事と思います。
人生は楽しく幸せで、わくわくする事ばかりではありません。また逆に辛い事だらけでもないというのが現実でしょう。ですから自分には、これといった事もなく、無事に一年が過ぎお正月を迎えられるのが一番幸せである。と言う人もいます。これはこれで一面の真理を含んでいるのかも知れません。
この言葉に似た禅の有名な言葉に「無事是貴人(ブジコレキニン)」という言葉があります。
ことなしと書いて無事、貴い人と書いて貴人と読むのですが、これは「無事に日々を過ごす事がめでたく、その様に出来る人が貴い人」という意味に思われがちですが、真の意味は若干違います。
ここで言う「無事」とは、幸せだとか不幸せだとか善だとか悪だとか計らない、求めない事を言うのです。また、「貴人」も貴族や名士といった人達の事ではなく、貴い境地、禅語で言う所の「安心(アンジン)」これはアンシンと書くのですが、不安が無く揺るぎない所を得た人の事ですから、本当の意味は「外に幸せや安心を求めるのではなく、それらを止めて自己に向う所に真の安心がある」という様な意味になるのです。
「無事是貴人」の真の意味をかみしめながら、自分は今年、アンジンに少しでも近づけたのであろうか。来年は更に近づけるのであろうか。そんな事を思いながら、年の瀬を過ごす今日このごろであります。
札幌市 龍松寺
池田 賢一
池田 賢一