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三月十日

法話   2026/03/08
2026年03月08日放送

皆さんおはようございます。増毛町天総寺 谷龍嗣です。

私は毎年、三月十日になると思い出すことがあります。
平成十三年三月十日の早朝、私は頭を剃り、横浜市にあります大本山総持寺の玄関に立っていました。そこは禅の修行道場。厳しいとは聞いていましたが、前日まで学生だった私にとって未知の世界でした。玄関に掛かっている木板という厚い木の板を「ごめんください」の合図の代わりに木槌で三回打ち鳴らします。しかし、すぐに迎えの僧侶が来るわけでもなく、数時間そこに立ち続けます。世にいう庭詰めです。厳しい禅の修行道場に入る意志が本当にあるのかを試しているのです。数時間後、先輩僧侶が目の前に現れ、坐禅の際に肩を叩く警策という木の棒で玄関の床をドンと一突きし、「尊公、お山に何しに来た。(あなたは大本山に何をしに来たのか)」と問われるところから修行が始まりました。
早朝から坐禅・お参り・作務・食事・就寝に至るすべてが規則に従って進んでいきます。早く帰りたい、そんな思いを持って過ごしていた日々もなかったわけではありません。私はいつかは寺を継ぐのだろう、という決意無き決意のような曖昧な思いで人生を歩んできたように思います。
その後の人生である老師に出会い気づきをいただきました。お寺に生まれた僧侶の在家出身僧侶の発心にかわるものは僧侶としての使命感です。僧侶としていただいた命を何のために、どのように使うかが大事である、という言葉です。
一度しかない人生、いただいたこの命を悔いなく大切に使っていきたい。私の祖父の命日でもある三月十日は毎年、私の人生再スタートの一日です。

増毛町天総寺
谷龍嗣

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