おはようございます。函館市　永全寺　齊藤　隆明です。
演題は「施して思わず」です。
仏教で大切な実践行の一つに布施があります。
ものでも心でも惜しみなく分け与えることです。
ただどうしてもその行為の後に「私があなたの為にしてあげた」という思いがついてきます。
私のお寺では春秋のお彼岸とお盆の前後に数人の檀信徒にご奉仕として納骨堂の掃除をしていただいております。
ただ年々高齢化の伴い参加者が少なくなってきております。
そんな中掃除の前日に、６０代女性のTさんが一人納骨堂にきて花瓶の掃除や香炉の線香を取り除き灰をきれいにならしている光景をみかけました。
「明日みんなでやりましょう」というと、「なんもー私勝手にやってすぐ帰るからかまわないで」といってきます。
そのおかげで次の日の春彼岸だとまだ寒い中、時間がかかってたいへんなのですが、Tさんのおかげで午前中で大体終えることができます。
そのことをご本人は「私が前の日に来てある程度やったんだ」と一言も言いません。
また冬のある日には「ガリガリ」と音がするなぁと外を見ると、黙々と雪かきをしているTさんを見かけることがあります。
「すみません。そこまでしなくていいのですよ。」というと、やはりいつもの調子で「なんも勝手にやってるから」と言ってきます。
家からわざわざ２０分も歩いてきてるので、御礼に何か渡そうとしても、一切もらうこともありません。
施してやったと思わず、また自慢して語ることもせず黙って実践している姿をみると、「いつも申し訳ないなぁ」という気持ちになると共に、その背中から大切な教えを学ばせていただいております。