「明珠在掌」
皆さんは、「幸せの青い鳥」という童話をご存知でしょうか?兄のチルチルと、妹のミチルが、幸せの青い鳥を探して夢の世界へ旅に出るお話です。
二人はいくつもの不思議な国を巡って青い鳥を連れて帰ろうとしましたが、とうとう果たせませんでした。ベッドの上で目が覚めて、ふと鳥かごを見ると、かごの中に探していた青い鳥の羽根が入っていました。
わざわざ探しに行かなくても、きょうだいが家で飼っていた鳩こそが、実は幸せの青い鳥だったのです。
このお話は、幸せは自分のすぐ近くにあるのに、我々はそのことになかなか気付かないものなんだと教えてくれています。
「明珠在掌(みょうじゅてのひらにあり)」「明珠在掌」という禅の言葉があります。素晴らしい宝物は、最初から手のひらの中にあるのだ、という意味です。
数年前にあるお檀家さんにお参りに伺った際、ご主人を亡くされたおばあちゃんが、私にこんな話をしてくれました。
「若さんね、旦那が生きてるときは、腹を立ててケンカしたこともあったよ。けど、亡くなった今となっては全てが懐かしく思える。愛おしく思えるんだよ」と。
私は「亡くなった今となっては全てが懐かしく思える。愛おしく思える」という言葉に深い深い愛情を感じると共に、そうは言ってもそのおばあちゃんはご主人のことを元気なうちから大切に思っていたんだろうなと感じました。
一番身近な存在の大切さ、いてくれる有り難さに気付いていたんだろうなと思いました。
幸せは自分のすぐ近くにある。素晴らしい宝物は最初から手のひらの中にある。
皆さんのすぐ近くにも、きっと幸せや宝物があるはず。必要なのは、探しに行くことより、気付くことです。
押見 正貴