他のために生きる
法話
2019/05/11
2019年05月11日放送
おはようございます、士別市 弘濟寺 藤村克宗です。
以前、百歳で亡くなった松澤さんという檀信徒のお爺ちゃんの御葬式のときのことです。百歳という年齢ですから、同年代の友達も居らず、地元に親戚も居りませんでしたから、新聞の死亡広告は載せずに、近親者だけで通夜のお勤めを致しました。ところが、翌日の葬儀告別式のとき、驚いたことが起きたのです。何と会場には溢れんばかりの参列者が次々と訪れたのです。
いったいどうしたことでありましょうか。手先の器用だった松澤さんは、まだ物がこんなに豊かでない時代ですから、解体した家の廃材や、廃止になった線路のレールの端材、空になった一斗缶などを上手に加工して、桶やタライ、ふるいや、湯たんぽ・・・様々な道具やご家庭にあると便利な物を作って、それを街中に配っていたそうなんです。また、とっても面倒見の良い松澤さんは、困りごとの相談に乗ったり、街の人の用足しや買い物などを快く引き受けていたそうなんです。街中みんなが、何かしら松澤さんのお世話になっていたんですね。ですから、訃報を知った人々が「せめてお線香の一本を・・・」をいう気持ちで大勢駆けつけたのでありました。
自分を勘定に入れずに、他人のために尽くす生き方を百年間に亘ってて実践されてきた松澤さんのように、今、生かされているうちにしっかりと誰かの支えになれるような生き方ができたら素晴らしいですよね。
士別市 弘濟寺
藤村克宗
藤村克宗