小学校四年生のユキちゃんとの出会いはユキちゃんのお母さんの枕行の時でした。
「おかあさん、おかあさん」
「おかあさん」
母親の周りを取り囲むようにユキちゃんと弟が目を真っ赤に腫らして泣いておりました。
四十九日のお今日が終わった時ユキちゃんが私にこう言いました。
「お坊さん、ユキのお母さんはどこへいたの？ちゃんと天国に行けたのかなあ」
「ユキちゃんのお母さんはね『仏様』になったんだよ。そしてユキちゃん達のことを見守っているんだよ。
仏様はね、三つのことを守りなさいって教えてくれているんだよ。
『わるいことはしてはいけません』
『よいことをしなさい』
『すべての人やものを大切にしなさい』って」
するとユキちゃんはハッと何かに気が付き、表情がパアっと明るくなり
「あ、お母さんも同じこと言ってた！お母さんも悪いことしちゃダメよ、良いことをしなさい、物を大切にしなさいって言ってたよ！」
「そうだったんだね。じゃあユキちゃんはこれからも仏様とお母さんとの三つの約束を守ってね」
「うん！わかった。お坊さんどうもありがとう！」

それから二年後三回忌の時にお父さんが嬉しそうに教えてくれました。
「ユキはね、毎日、掃除に洗濯もしてくれてね、母親に代わって良く家のことを手伝ってくれるんですよ」と。

そこには家族みんなの元気な笑顔があったのです。