「日本の美しい習慣」
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澄み切った秋の風が吹き抜けて参ります。スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋。皆さんは何をして過ごされていますでしょうか。
この秋も、あっという間に過ぎてしまいますが、いつも通りに過ごしてまいりましょう。
今日は、日本の美しい習慣についてお話しいたします。
お寺の近所にある床屋のTさんは健康に心掛け、毎朝5時、大きく腕を振ってウォーキングをされていました。
3年前に奥様を亡くされてから、年齢の事も含めて、衰えられましたが、「あいつに今迄世話になった分を返すんだ」と仏壇のお位牌の前で手を合わせ、毎月の月参りの際には、老いと暮らす毎日を、いつも楽しく聞かせて下さいます。
8月の事でした。私がいつもの様にお供えをした「おりくぜん」を目の前に座ると、
「住職さん、私は、今日はもう嬉しくて、安心してこの世を去ることが出来ます」
と申されました。「何か良い事でもありましたか」と返すと、
「今日のご飯は、息子の嫁がいつの間にかやってくれたんです。もう私には何も伝えることはありません・・・」
Tさんの安心とは、脈々と流れ去る「法」という教えの流れの中で、「自分から進んでお供えをするという行為」を伝えることが出来たことで、この人生に悔いはないということでした。
お釈迦様は「私の出来ることは全てやり終えた」と申され「得度の因縁を為した」とされます。「後の人の為の原点として、その姿を示すことが出来た。私はその姿を追う者の心の中にずっと生き続けるであろう。」と遺されています。
この姿は無言のうちに、押し付けることなく届いた想いなのです。
毎日の行為は「まるで荷車を引く牛の足跡に、必ず車輪の跡が付いてくるように」結果として自ずと付いてまいります。
さあ、安心して今日も元気にまいりましょう!
野村 宣英
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