「利他行」
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仏教には相手の幸せを共に願い行う「利他行」という教えがあります。
今日はそれにまつわる一編の詩を紹介いたします。
「一人の悩みを癒しえば 一人の憂いを去りえなば 疲れし鳥の一羽をば 助けてその巣に返しえば 我が生活は無駄ならず」
アメリカの詩人 エミリ・ディキンスンさんの詩です。一人でもいい、小さな小さな小鳥のような存在でも、私に出来る事をしたのならば、その人生は、むだではない。
これは、先日、伺った東京高田馬場にある「日本点字図書館」で出会った詩です。
実は、この日本初の点字図書館を建てたのが、私の地元増毛町出身の本間一夫さんです。本間さんは、日本最北端の酒蔵「国稀酒造」で大正四年に生まれました。
五歳のころ脳膜炎により失明、十三歳で函館の盲唖院に入学し、そこで点字と出会います。在学中、イギリスには点字図書館がある事を知りました。
そこで「後から来る、目の見えない方の為に、いつかは、日本でも、点字図書館を建てたい。」と思い始めました。
昭和十五年十一月十日、本間さんは、様々な困難を乗り越え、日本初の点字図書館を設立いたしました。
しかし、太平洋戦争の混乱で、火災にあい、残った図書を増毛町の実家に持って行き、戦中はそこから、点字を翻訳し全国に届けておりました。
点字図書館の方がこう言います。現在、点字図書館にある蔵書は二十七万冊を超え、日本や世界で点字を必要とされている人や関わる全ての人達へ幸せを届けていますよ。
点字図書館には、本間さんの相手の立場を想い「あなたも、私も、一緒に幸せになろう」という願いが満ち溢れていました。
これが、相手の幸せを、共に願い、共に寄り添い、共に歩む「利他行」の姿です。
谷 龍嗣
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