「適切な言葉」
「言葉は、その時の気持ちや、心境によって、感じ方が違うんですね。」と、話かけられましたのは、ご主人の四十九日法要も終わり、初めてのお月参りに伺いましたそのお宅の奥様でした。
「主人が亡くなり、毎日寂しい日が続きました。元気だった頃の事を思い出しては、別れを惜しんでました。そんなある日、主人が毎日めくっていた、お仏壇横に吊して有った、この『日めくり』なんですよ」と、 見せて頂いたのは、一日から三十一日まで日にちが書かれ、その日その日に、お経のことばや故事等が書かれて居る『日めくり』でした。
「何度となく目にしていた言葉ですが、今までは心に感じ入る事は有りませんでしたが、この言葉を見た瞬間、身体がスーッと、楽になったような気がしました。」と、開いてくださったページには、『別れを悲しむより、出会いに感謝』と、書かれておりました。「この言葉に助けてもらいました。」と、奥様は話されました。
私共の宗旨、曹洞宗を開かれた道元禅師様のお言葉に
「学道の人は言葉を出さんとせん時は、三度顧みて、自利々他の為に利あれば、 是を言うべし。利なからん時は、止まるべし」と、示されておられます。
ご説明致しますと「仏道を学ぶ人は、ものを言おうとするとき、深く・良く 考えて、自分のため、相手のために、良い事と思えば、これを言うべきであり。 もし、良くない結果をもたらすと気づいたら、慎むべきである。」と、言われております。
このような言葉がございます。
たった一言が、人の心を傷つける
たった一言が、人の心を暖める
常日頃から相手を気遣い「適切な言葉」で、お話ができるように心掛けて行くことが大切なんですね。
滝本 昌典