「お塔婆(おとうば)とは何ですか?」
本日は<虫さんの命>と題してお話させていただきます。
今年の夏、家の中に大量の蟻が発生した為、スーパーで、巣を撃退する商品を買おうとした時、一緒にいた友人が私に言いました。
「お坊さんがそんなもの買っていいの?」
私はその時、何の躊躇もなかったのですが、友人の一言で「はっ」としました。そして何か恥ずかしい気持ちに襲われて、商品を棚に戻しました。
なぜなら、仏教には「生きものを殺さず」という教えがあるからです。
そもそもこの教えは、罰を恐れたり、道徳的に「これをしてはいけません」と、注意されて行うものではありません。
それは、私達が生まれながらにして持っている、良心ともいうべき仏の心に目覚めた時、自ずと「殺すことなんてできなくなる」というものであり、その生き方こそ、仏の御命(おんいのち)を生きる、本来の自己の姿なのです。とはいうものの、この当たり前のことを、生涯貫き通すとなると容易ではありません。例えば、人は外を歩くだけで、知らず知らずのうちに小さな虫さんを踏んでいることもあるからです。
現在は冬となり、殆どの虫さんは見かけなくなりましたが、暖かくなると、また沢山の虫さんが生まれてきます。命のバトンによって生まれてくるその命は、私達と同じく、地球という大きな生命体の仲間であり、尊いものにかわりありません。
お釈迦さまは『一切の生きとし生けるものに、無量の慈しみの心をおこすべし』とお示しです。
もう今年も残り僅かとなりましたが、私はいま一度、このお示しをかみしめながら、今年一年を省みて新年に臨みます。
寒さ厳しき折、ラジオをお聴きの皆様も、お体には十分ご留意なされまして、どうぞ良いお年をお迎えください。
齊藤 隆明