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「杓底の一残水 流れを汲む千億人」

法話   2013/11/16
2013年11月16日放送

私の住んでいる八雲町には、昔から水のきれいなことで有名なユーラップ川という川があります。長さ30kmほどの本流にはダムなどの川をせき止めるものがなく、自然のままの流れが残されており、毎年秋には10万匹のサケが産卵の為に帰ってくる姿を見ることができる数少ない川の一つでございます。
小学生の頃、帰ってくるサケを見によく川へ遊びに行ったものです。産卵を終えたサケは力尽き、我が子の誕生を見ることもなく一生を終える。しかし春先には、小さなサケの子ども達が川に泳ぎ出します。親がいなくても育つのです。では誰が育てているのだろうか?それはきれいな川と自然が育てているのです。
曹洞宗大本山永平寺の入り口の石柱には「杓底の一残水 流れを汲む千億人」という言葉が刻まれています。道元禅師様はいつも柄杓で汲み取った水を半分だけ谷川に戻されていました。何もそんなことはしなくても、谷川の水は豊富で枯れる心配はありません。しかしどんなに水があっても一滴の水をも粗末にしないという禅の教えです。さらに柄杓の水を残して川に返せば、その水を下流の人々も受け止めることができ、千億もの命につながっていくという教えでもございます。 禅師様は同じ川の水を飲んで共に生きるだけでなく、同じ喜びや悲しみを分かち合えるようにとも諭されております。
今年もサケがユーラップに帰ってきます。そのためにも私たちが普段の生活の中で水を大切にし、自然を守り後世につなげていくことがユーラップで生きる全ての命につながっていくのではないでしょうか。

八雲町 遊国寺
河西 大眞

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