2012年9月15日放送
私たちの毎日はいつも競争を強いられているようです。時間に追われ、仕事に追われ、人に追われ、心のゆとりを失いがちです。お釈迦様は、人生とは意のままにならないものであると示されました。意のままにならない現実と、それでも走り続けなければならない今という時代に私たちは息苦しさを感じています。どこかで心に一息つけましょう。
四年前に亡くなった漫画家の赤塚不二夫さんは自身の作品の人物にこんな言葉を言わせています。
「これでいいのだ。」
何がおきても、どんな結果になっても最後はいつも「これでいいのだ。」なのです。とても温かく優しい気がします。悪いことをして開き直ったり、無責任で言うのは論外ですが、うまくいかない事、思い通りにならない人生を、それでも全部受け入れ「これでいいんだよ。」と自分自身を肯定してあげる優しさがそこにあります。一番を争うのとは違う別の生き方に気づくことができれば心にゆとりが生まれます。
以前、国会で事業仕分けの中継を見ていた時、スーパーコンピューターの開発について「一番ではダメなんですか。二番ではダメなんですか」という女性議員の発言が耳に残りました。これも一つの考え方です。ナンバーワンよりオンリーワンの発想の転換です。人生が思いのままにならないのは他と比べるからです。ナンバーワンになれないことで思い悩むより自分は自分というオンリーワン、それもまた人生、いや、それこそが人生と思い定め「これでいいのだ。」と受け入れることができたなら心と肩の荷を少しは軽くすることができます。自分を否定することはありません。自分をきちんと認めてあげる、「これでいいのだ。」は優しさに充ちた、自分を励ます力強い言葉だと思います。
田中 泰順