2012年2月18日放送
法話
2012/02/18
2012年02月18日放送
二月に入り北海道では一面の雪景色ですが、福井県永平寺では若いお坊さんがこれから修行に入る季節でもあります。
私事ですが今から二十五年前、永平寺に修行に行って参りました。それまではお寺の事は全く知らず、お経も覚えていない、ごく普通の学生でした。家で修行に行く身支度をしていると、母親が「衣の衿の中にお金を縫い付けておいたから、何かあったら使いなさい」と言ってきました。そのときは何も知らない私は、なんでお金を衿の中に縫い付けたんだろうと思っていましたが、その答えはすぐにわかる事になりました。
修行に入り、今までとの生活とは全く違う世界に入って来たわけです。最初は右も左もわからず、戸惑い、ただついて行くだけでやっとでした。もし私一人だけがこの生活・修行をしていたら、耐えきれなかった事でしょう。
でも周りにも、私と同じ修行をしている雲水が沢山いました。雲水とは修行僧の事です。私もその中の一人なんです。 皆が皆同じ生活を送っています。同じ生活をする事によって、それがあたり前になり普通の事になっていくわけです。
もし辛い事があったとしても、それは自分一人だけじゃなく、自分の他にも同じ位に辛い人もいるんだと思い、また自分の事を心配していてくれる人が必ずいるという事を忘れないでいてほしいです。私は修行に行く前に母親が衣の衿の中にお金を縫い付けておいてくれて、私の事を心配してくれていた事にとても感謝しております。幸いに、そのお金を使わず無事お寺に戻ってこれました。
小樽市 南龍寺
吉田 龍洋
吉田 龍洋