2011年10月29日放送
法話
2011/10/29
2011年10月29日放送
首都圏の駅などでは節電で止まっていたエスカレーターが動き、昼間消していた照明がつき始めたようです。震災後、東京へ行くと空港や駅は暗く、止まったエスカレーターを横目に見ながら、荷物を持って階段を上り下りして、不便に感じ戸惑ってしまいました。
人は、今まで当たり前と思っていた事が当たり前ではなかったと気付いた時、それがどんなに有難いことだったのかと感謝の気持ちになれるものです。 これまで私達は、様々なものを浪費し続けることによって豊かさを求めてきました。それが当たり前のことのように、便利に慣れ錯覚してしまっていたのです。実にもったいないことです。
もったいないという言葉は、世の中にモノが溢れ大量に消費を続ける現代ではあまり聞かれなくなっていました。しかし、モノを大切にしてきた先人たちの生活の中では間違いなく、もったいないという精神が息づいていました。
子どもの頃、ご飯茶碗にご飯粒が残っていると、「最後の一粒までもったいないからしっかり頂きなさい」と言われたように。モノには限りがあり、それらを大切に扱うことで愛着を持ち、さらにはそれを作ってくれた方やそのものに敬意を払う心があったのです。
当たり前と思って自分中心に生きてしまいがちな私達が、実は多くの見えないものの有ること難しのおかげによって、包まれ、支えられ、生かされていることを、感謝の念を忘れずにいたいものです。
豊頃町 放光寺
井上 泰孝
井上 泰孝