2011年10月22日放送
法話
2011/10/22
2011年10月22日放送
今や、知りたいことは何でもインターネットから、検索ボタンひとつで探し出せる時代。一昔前なら、書籍を買って読むことでしか得られなかった知識も、インターネット上で調べれば、詳しい解説が無料で見られる便利な世の中になりました。 知識・情報の集積。この点において、コンピュータはもはや万能と言ってよいかもしれません。
私は、お年を召されたお檀家さんのお宅へお参りするとき、よく戦時中の思い出話を教えていただくことにしています。シベリアに抑留された時、餓死していく仲間たちを見ながら、雑草を食べて飢えをしのいだこと。十勝の空襲の際、爆撃機に見つからないよう草むらに隠れた経験・・・。知識としてしか戦争を知らない私に、経験者にしか語れない言葉で教えてくださいます。
曹洞宗ではお釈迦さまから授かったみ教えを、師匠から弟子へ継承する儀式があります。式を行う場所は、部外者の立ち入れないように閉め切った本堂。そこではお釈迦さまの時代からの、歴代の弟子の名前が連なった書の中に、自分と師匠の名前を確認します。この作業を通じて、自分も先人たちの中に名を連ね、初めて一人前の僧侶と認められることになります。経典の知識と同じくらい、あるいはそれ以上に悟りの経験、そのつながりを重視しているのです。
我々が学ぶ学問の知識・歴史事実は、そのかなりがパソコンから引き出せるようになりました。しかし文章では伝わらない、実際にその時代を生きた人が面と向かって話すことによってしか伝わらないものがあります。新しい世代に、経験の継承。たまにはじっくり、ご家族で昔話をしてみてはいかがでしょうか。
帯広市 永祥寺
織田 秀道
織田 秀道