2010年5月1日放送
法話
2010/05/01
2010年05月01日放送
「この目で見た、この耳で聞いた、間違えない」と言い聞かせ、自分の都合勝手な独り善がりの世界を広げていませんか。 ある方は「世の中の活動は、見えない糸の繋がりだ」という。私達が、実際に見なかったり聞かなかったりするところに「生きる支えとなっている大切なものが、見え隠れしている」ことを忘れてはならないのです。私達が「お蔭さま」と手を合わせるのは、生きるものの深い認識から生まれた姿勢だと思います。
私達が生きるために、体内の臓器は日夜休むことなく働いています。私達の意識に関わらず、一年間に9,460,800回の呼吸が行われています。私達は、自然とも深い関係があり、四季折々の季節感によって生活のリズムを維持しています。その自然は、気取ることもなければ隠そうともせずに、いつも精一杯「もちつもたれつ」で生きるご縁の喜びを演出しています。
私達が、恵まれ感謝すべき状況にあるのに、どれだけ受け止めた態度かと思うと寂しく感じるのは、私だけでしょうか。道元さまは「この世は、諸縁の関わり深く、苦労を惜しまない努力があってこそ噛み合うものだ」と説かれています。私達の生きる世界は、不思議な浅からぬ因縁が展開していることを踏まえて「縁に随って行じ、縁に随って去る」の心情で、今此処でやるべきことをやるだけです。
この世は「無常」で、すべて変化し生まれ変わっていて、決して自分の思うようにならないのです。私達は、自分独りの力で生きているのではなく、多くの人や物に支えられて生きている自分に気づき、お蔭さまとご縁を受け止めさせていただく心の輪を広げたいものです。
三笠市 唱和寺
加瀬 道男
加瀬 道男