2010年3月27日放送
法話
2010/03/27
2010年03月27日放送
この季節を迎えると不思議に、かってローカル線の汽車の中での、幾度か転勤を繰り返し、定年退職を迎えたに見える御夫婦の姿と会話を思い出します。
「かぁさんやっぱりあのタンス投げたのか…」「投げたよ…あんたなんべん言えば分かるの…形見だ形見だ…なんぼ転勤するたびにあのタンスに悩まされたの…ようやく自分たちの家だもの…あずましく暮らそ…あんたの言うようにしていたら家の中、整理整頓できないしょ…」「うん、そうだな…分かってるけどいたわしかったナ」
急に後ろの御夫婦の会話が閉じたのです。 何となく後ろの席が気になってちらっと御二人を見て座りなおしました。ご主人は言わなければ良かった…心なしか項垂れている様子、奥さんは「つい言い過ぎた…」という様子でした。
私は車窓の流れ去って行く風景を眺めながらフト考えました。 お釈迦様さまは、人間は如何に生きるべきかと六年間のご修行の末に【身を整え・息を整え・こころ整え】【己を見つめる】坐禅によって、ついに悟りの人「仏」となられました。人は一人では生きてゆくことは出来ない・多くの人やものに支えられ・生かされることによって生きている…【心の整理整頓のありかた】を御示し下さいました。
今の時代、一番求められているのが【ぬくもりの心】一番忘れているものが【思いやりの心】だと言われます。 次々と胸痛めるニュースを見聞きするたびに【本当だナー】とうなずいている方も多いのではないのでしょうか。
春は【出会いと別れの季節】です。どうか御互いに心の整理整頓を心がけたいものであります。
厚岸町 吉祥寺
斎藤 章彦
斎藤 章彦