お正月から二週間ほどたちます。
いつものようにお仏壇に線香を立てて、母の遺影を眺めると、笑っている時の母の顔を思い出します。

特に、一番嬉しそうに私に話しながら、満面の笑顔を見せてくれた時の事です。

その話は、もう二十年以上前の事ですが、札幌に結婚披露宴に呼ばれ、帰ってくる途中に札幌駅前の大きな交差点での出来事でした。

母は着物を着ていて交差点で赤信号を、待っている時、急に雨が降り出したそうです。着物が濡れ、足袋が濡れるところ、隣の若い女性の方が傘を出して、一緒に駅の中までついて来てくれたそうです。母はニコニコし顔でその出来事を話してくれました。

その笑顔を今でも忘れる事無く、母の写真を見ると一番先に思い出します。

傘を貸してくれた事はもちろんの事、母に大きな笑顔を頂いて、家族全員が喜びと笑顔になり、嬉しく思いました。

全然知らない人に、何気なく傘をさして短い時間でもお話をして、一緒に歩いてくれる。誰もが出来そうでできない事なのではないかと思います。しかし、今の時代は、そのような時代なのかもしれません。

その女性の方は名前も言わなく「気をつけて帰ってくださいね！」と去って行きました。

私たち家族が母の前で笑顔で手を合わせられるのは、あの札幌駅前の交差点での出来事で、喜びに満ちた母の笑顔のおかげだと思って居ます。

何気なく他人が喜びそうな事に気づいたら実行してみる。それによりたくさんの喜び、感謝がいつまでも続くことに改めて気づかせて頂いた出来事でした。