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「人間、ひき際が肝心」

法話   2017/05/06
2017年05月06日放送

今年も春を迎え、私のお寺の前を流れるヤリキレナイ川は雪どけ水がサラサラと流れています。禅語に、「随流去(ずいりゅうこ)」、流れにしたがって去る、とあります。何物にも執着する心なく、自然に任せて生きる禅僧の姿をいいます。
「人間、ひき際が肝心」とは、私が心から敬愛してやまない、道北の枝幸町の長林寺の故島崎光雄老師の口癖です。
老師は戦後、復員してからしばらくの間、地元の小学校で教鞭をとられていました。人一倍努力家で企画力・行動力に優れていた老師は、すぐに頭角を現し、学校にはなくてはならない存在とまで言われるようになりました。
しばらくたったある時、長林寺の当時の住職である島崎素民老師に教員をやめて寺に帰ってくるようにと言われたそうです。そこで老師はキッパリと教員をやめて、長林寺の住職になりました。
その後、街の人々に、町議会議員に強く推薦され、やむを得ず出馬。見事、上位当選を果たしました。教員を辞めなければならなかった時、多くの教員仲間たちが、「島崎先生がいなくなったら、学校はガタガタになる、どうか辞めないでほしい」と懇願されたそうです。そんなこともあったため、議員になって、しばらく経ってから、教育現場視察があり『きっと、学校は俺がいなくなって大いに困り果てているに違いない』と、内心意地悪な期待をもって、久々に元の職場へ行ったところ、なんと、自分が勤めていた頃よりも、しっかりと学校運営がなされていたのを見て、驚いたそうです。と同時に、自分の思いあがった考えを深く反省させられたといいます。
爾来、人間引き際が肝心。何にしろ去る身であればこそ、「去る時は来た時よりも美しく」、そうありたい。という信念を持たれたのでした。
「ゆく川の水は絶えずして、しかも元の水にあらず」今日も、ヤリキレナイ川の水はサラサラと流れてゆきます。何事にもとらわれず飄々と生きられた故島崎老師の如くであります。

由仁町 常福寺
山川 章順

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