法話

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2010年11月20日放送

法話   2010/11/20
2010年11月20日放送

この春、京都の清水寺にふすま絵の大作を収めた画家、中島きよしさんは、幼い頃父親に捨てられ、母親の手一つで育てられました。しかし、その母親とも18才の時に死別します。天涯孤独となった彼は高校卒業と同時にいろんな仕事をしながら独学で絵の勉強をしました。
ある時、父親が病に臥せていることを風の便りに聞くのですが、自分は父の死を聞かされても、きっと絵筆は離さないだろうと予想しておりました。それ程、母と自分を捨てて、自分勝手に生きてきた父親には強い憎しみを抱いていたといいます。
ところが、それからしばらくして父親の訃報に接するや、絵筆を持つ手が震え、心は動揺し、まったく仕事が手につかなくなってしまいました。意を決して父親の下に向かい、遺体の置かれた部屋に入って驚きます。いたる所に自分の絵が貼ってあったのです。それを見て初めて父親の想いを知り、涙がとめどなく流れてきました。そして父親に対する見方も変わったといいます。
今では、父親への「いかり」や「憎しみ」がエネルギーとなって自分に絵を書かせてくれていたのだ、と思えるようになり、感謝の念すら湧くようになった、と語っております。 「生命は死んでもなお、輝いているものですね」と静かに語る姿が私の心に焼きついております。 憎しみの情が創作活動のエネルギーに昇華されていたことに自ら気づいた中島さんには、大切な何かを教えていただきました。

蘭越町 玉峰寺
田澤 豊彦

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