行事報告

第21回 禅をきく会

行事報告   2007/11/15

去る11月14日、札幌パークホテルを会場に曹洞宗主催「第21回 禅をきく会」が開催されました。

 今回の講師は、えりも町法光寺住職佐野俊也老師(特派布教師)と作家の五木寛之氏をお招きし講演を頂戴しました。五木氏の名声のため、一千名近くの聴衆が詰めかけました。
 冒頭、主催者を代表して藤原重孝教化センター統監の挨拶。統監は昨今の「命を軽視する」風潮を嘆かれつつ、曹洞宗が標榜する人権・環境・平和を訴えられました。
 最初に『み仏の絆を生きる』と題して佐野俊也老師の講話。冒頭の藤原統監の挨拶に触発されたかのように、命の大切さ、母と子の絆などをお釈迦さまから道元禅師・瑩山禅師そして自身のことにまで至り説かれました。「わが誕生の日は、母受難の日」のことばに大衆は大いに涙しました。
 佐野老師のお話に引き続いて札幌禅林青年会(会長 札幌市瑞現寺副住職斉藤正憲師)有志がステージに上がり、1,000名を超える満場の聴衆とともに椅子坐禅となりました。
 時至って、大熊真龍師(天童寺副住職)が詠讃歌を奉詠して開静とし、わずかな坐禅ではあるが、参加者の評価は頗る高いものとなりました。

 椅子坐禅終了後、作家五木寛之氏による『こころの風景』と題しての講演。
現代の日本国民は、総じて鬱状態であるということから話を展開。これは愉快で楽しいお話でありました。場内の大観衆は五木氏の話に引き込まれ、笑ったり、考えさせられたり、あっという間に時間が過ぎた感がありました。
 近頃は何事にもプラス思考・前向き・陽気であることが良いようにいわれているが、毎朝のニュースをみて鬱々たる気分にならない人はいない。と、「命を軽んじる風潮」を嘆かれ、「鬱」について語られました。「笑いが健康によい」とされていることに関して、もともとこの研究は、「笑い」と「嘆き」の双方が身心にどのような影響を与えるのか、ということを臨床実験したものであるという。実験結果は「笑う」行為は身体を活性化させ、ストレス物質を軽減させナチュラルキラー細胞を増やす働きがある。一方「嘆く(悲しむ)」行為は・・・身体を活性化させ、ストレス物質を軽減させナチュラルキラー細胞を増やす働きを持つ。という、つまり「悲」も「喜」も私たちが生き生きと、この世で過ごすための大切な要素であるということで、「笑う門には福」しか眼中になかった私には大変衝撃的なお話でした。
 五木氏は最後に、北陸地方の「雪つり」を例に「雪つりをするのは、堅い枝を持つ樹木です。堅い枝は雪の重みに耐え切れず、ポキッと折れてしまいます。ところが柔らかな樹木は、重い雪を枝に載せて枝をしならせて耐えます。やがて時がくればそのしなりで、積もった雪を弾き飛ばし、枝を天に向かって突き挙げます。
「鬱」とは心がしなっている状態です。それは、新たに再生する準備をしていることを意味します。柔軟な心で苦しみを背負ってしなっているのです。」
と、平素鬱々となりがちな私たちに勇気あることばをかけられました。また、自殺問題などにも触れられ、「命の尊さ」を説かれました。
 今回の「禅をきく会」は、冒頭の藤原統監の挨拶から始まり、佐野老師・五木氏とすべて「命の尊さ」について深く考えさせられました。
 で、後日。東京で行われる「禅をきく会」の今年のテーマが「命の尊さ」であると知り、「時代が欲するところは、首都東京も道都札幌も同じであったか。」と妙に納得させられたものです。

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